ゆっくりと、思い出していた
「人は泳ぐ事も走る事も出来るのに、
どうして空だけは飛べなかったんだろう」
「翼が・・・無かったから」
「水掻きが無くても、泳げるのに」
「自分達の・・・罪の重さで飛べないんだよ。
それがヒトに付けられた重りなんだ」
君とこんな話をしたのはいつだっけ?
魂が夢を見る場所も、昔身体だった所も忘れた。
いつか僕らは遠すぎた未来よりも遥かな場所を
目指して、そして傷付いたね。
何も思い出せなくても、感じた確かな痛みだけは残っているのに。
いつまでも変わらないはずだった。
「前と同じなのは後ろ向きな想いだけだね。
結局僕らはカゴの中に、決して飛べない鳥ばかり集めている」
君は悲しそうに「そうだね」と笑った。
黒いままの羽根は青い空には不自然すぎて、
目の前に広がる紅い空だけをただ見つめながら。
いつまでも増して行く重力に繋ぎ止められていくんだね。
どこまでも狂おしい旋律で
この胸を掻き毟るような、そんな想いをずっとしてたい。
空気に浮けないヒトという重りを、残していつかあの彼方まで。
「昔身体だった場所を辿って行こう」